1. はじめに:薬局DXの「知識資産」としてのCLAUDE.md
第1回ピラー記事から第7回まで、本シリーズではポリファーマシー対策の3つのAIエージェント(検出・提案・フォロー)と、Claude CodeのSkills(第4回)・Hooks(第7回)の活用方法を解説してきました。第8回となる本記事では、本シリーズで整理しているClaude Code活用の主要構成要素のうち「CLAUDE.md」を取り上げます。
CLAUDE.mdは、Claude Codeに永続的な指示を与えるMarkdownファイルです。薬局DXにおいては、ベテラン薬剤師の判断基準・トーンルール・運用ルールといった暗黙知をテキスト化する基盤となり、属人的な業務から組織的な運用への転換を支える「知識資産」となります。本記事では、CLAUDE.mdの公式仕様と、多店舗薬局での知識マネジメントへの応用を解説します。
2. CLAUDE.mdの基本構造(公式仕様)
CLAUDE.mdはClaude Codeがセッション開始時に読み込むテキストファイルで、複数の階層で配置できます。配置場所と優先度は以下の通りです(2026年5月時点の仕様)。
- グローバル/ユーザーレベル:
~/.claude/CLAUDE.md— 全プロジェクト共通の個人的な設定 - プロジェクトレベル:
Project-root/CLAUDE.md— プロジェクト固有の設定(Git管理対象、チーム共有) - ディレクトリレベル:
Project-root/<dir>/CLAUDE.md— 特定ディレクトリ固有の設定 - パーソナル/ローカルレベル:
Project-root/CLAUDE.local.md— 個人的な設定(gitignore対象)
各階層は置き換えではなく結合(merge)され、すべてのルールが同時に適用されます。原則として、より具体的な場所にある指示が優先されます。矛盾する指示があると挙動が不安定になる可能性があるため、グローバル、プロジェクト、店舗固有、ローカル設定の間で重複・矛盾が生じないように管理する必要があります。
運用上のベストプラクティスとして、CLAUDE.mdは200行以内を目安に簡潔に保つことが推奨されます。長くなる場合は、複雑なルールを .claude/rules/ サブディレクトリや別ファイルに分割し、CLAUDE.mdは中核的な指示と各ルールへの索引として機能させる設計が有効です。
3. 薬局現場の暗黙知が抱える3つの課題
薬局現場には、ベテラン薬剤師の経験に基づく暗黙知が多数存在します。これらをテキスト化せずに運用すると、以下のような課題が生じます。
第1の課題は「属人化」です。「この医師には依頼形が好まれる」「この患者層では時間帯を変えた方がよい」といった判断は、ベテラン薬剤師の経験に依存しがちです。新人薬剤師や応援薬剤師が同じ判断基準で対応するのは難しく、薬局全体の対応品質にばらつきが生じます。
第2の課題は「多店舗での標準化困難」です。複数店舗を運営する薬局では、店舗ごとに微妙に異なる運用ルールが存在しがちです。本部が方針を出しても、店舗間で解釈や運用に差が生じ、薬局全体としての一貫性が失われます。
第3の課題は「教育コストの高さ」です。新人薬剤師の教育には、暗黙知を口頭で伝える時間が必要です。OJT中心の教育では、教える側の負担が大きく、教わる側の理解度にもばらつきが生じます。
4. 薬局でCLAUDE.mdに集約すべき内容
薬局DXにおいて、CLAUDE.mdに集約すべき内容は大きく4カテゴリに分類できます。これらをテキスト化することで、ベテラン薬剤師の暗黙知を組織の知識資産に変換できます。
- (1) 判断基準:6種類以上の内服薬を服用する患者の抽出基準、減薬提案の優先度、介護施設入所者の取扱い等。本シリーズの第2〜6回で扱った算定要件への対応も含む
- (2) トーンルール:医師宛文書の文体(依頼形)、患者向け説明の平易さ、命令調・断定調の禁止等。第5回で扱った処方提案AIの運用に直結
- (3) エスカレーション基準:抗がん剤・透析患者・小児等の薬剤師直接判断項目、異常検知時の通知ルール等
- (4) 個人情報・セキュリティルール:直接識別子の取扱、外部AIサービスへの送信前チェック、仮名化IDの管理ルール等
これらは静的なルールであり、薬剤師の最終判断を代替するものではありません。あくまでClaude Codeが各エージェントを起動する際に参照する「薬局の判断指針」として機能します。
5. 多店舗薬局での運用パターン
多店舗薬局では、CLAUDE.mdの階層構造を活用して、本部の標準方針と店舗の固有事情を両立できます。組織として標準を共有する場合は、プロジェクトレベルの ./CLAUDE.md または ./.claude/CLAUDE.md をGit管理し、店舗固有の事情は店舗ディレクトリ配下のCLAUDE.mdに分けて記述するのが実務的です。具体的な運用パターンの一例を以下に示します。
上記の階層構造により、本部が定めた標準方針はプロジェクトレベル(Git管理)で全店舗に共有しつつ、店舗ごとの固有事情はディレクトリレベルで反映できます。本部の方針が変わった場合は、プロジェクトCLAUDE.mdを更新してGitで配布することで全店舗に反映されるため、運用変更のスピードが向上します。
6. CLAUDE.md運用の3つの実務ポイント
CLAUDE.mdを薬局で運用する際には、以下の3つの実務ポイントに留意します。
第1のポイントは「200行ルールへの対応」です。CLAUDE.mdは長くなりすぎると指示遵守が不安定になる可能性があるため、200行以内を目安に簡潔に保つことが望ましいとされます。薬学的判定基準・トーンルール・エスカレーション基準など、項目が多くなる薬局では、複雑なルールを .claude/rules/ サブディレクトリに分割し、CLAUDE.mdは中核的な指示と索引として機能させる設計が有効です。
第2のポイントは「定期的な見直し」です。令和8年度改定のような制度変更、新規Skill追加、店舗運用の変更等の際には、CLAUDE.mdの該当箇所を更新する必要があります。本部主導でプロジェクトレベルのCLAUDE.mdを更新し、各店舗のディレクトリレベルCLAUDE.mdは店舗管理薬剤師が更新する役割分担が現実的です。
第3のポイントは「Git管理とレビュー体制」です。CLAUDE.mdの内容変更は薬局全体の業務に影響するため、Gitでバージョン管理し、変更前に薬剤師責任者のレビューを経るフローが望ましいです。CLAUDE.local.mdは個人検証用としてgitignoreで管理外とします。
7. 個人情報保護とCLAUDE.mdの管理
CLAUDE.mdには、薬局の業務ルールや判断基準を記述しますが、個別の患者氏名・生年月日・住所等の直接識別子は記載してはいけません。CLAUDE.mdは複数の薬剤師が参照する共有資産であり、Claude Codeのコンテキストとして読み込まれてAIの応答生成に利用されるため、個別の患者情報を含めると個人情報保護のリスクが高まります。
記載すべきは「6種類以上の患者を介入候補とする」のような抽象的な判断基準であり、「田中様は◯◯」のような個別記述は薬歴やMemory等の別の管理対象とします。CLAUDE.mdの管理は、薬局運営会社・法務担当・情報セキュリティ責任者と連携して、保管場所、アクセス権限、変更履歴、レビュープロセスを定めた上で運用してください。
8. まとめ:知識マネジメントとしてのCLAUDE.md
CLAUDE.mdは、薬剤師の暗黙知をテキスト化し、薬局の知識資産として共有する基盤となります。本部標準・薬局共通・店舗固有・個人検証という4階層を活用することで、多店舗薬局の知識マネジメントを階層的に整備できます。判断基準・トーンルール・エスカレーション基準・個人情報保護ルールを200行以内にまとめ、複雑な内容は .claude/rules/ サブディレクトリに分割する設計が現実的です。
本シリーズで整理しているClaude Code活用の主要構成要素のうち、Skills(第4回)・Hooks(第7回)に続き、CLAUDE.md(本記事)が完了しました。次回・最終回(第9回)では、主要構成要素のうち残るMemoryを取り上げ、主治医ごとの提案最適化や患者ごとの履歴蓄積を解説します。CLAUDE.mdが「静的なルール」を扱うのに対し、Memoryは「動的に蓄積される文脈」を扱う点が対照的です。最終的な薬学的判断は薬剤師が行うという原則は、すべての構成要素で共通します。
参考文献・リンク
- Claude Code公式ドキュメント「How Claude remembers your project(CLAUDE.md / Auto memory)」:https://code.claude.com/docs/en/memory
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001684593.pdf
- 日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和8年6月1日施行)」:https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/pharmacy-info/2026/20260402_01.pdf
- 第1回ピラー記事:令和8年度調剤報酬改定×AI|薬局DXとポリファーマシー対策の完全ガイド
- 第2回サテライト:服用薬剤調整支援料2を狙うClaude Code薬局DX|4週間PoC実装ガイド
- 第3回サテライト:服用薬剤調整支援料1×Claude Code|125点の減薬達成を支援する薬局DX
- 第4回サテライト:Claude Code Skills×薬局DX|STOPP/START構造化ガイド
- 第5回サテライト:医師宛トレーシングレポート×Claude Code|薬学的有害事象等防止加算を狙う実装
- 第6回サテライト:LINEフォローAI×Claude Code|かかりつけ薬剤師フォローアップ加算50点
- 第7回サテライト:Claude Code Hooks×薬局DX|業務フロー連携の実装ガイド
免責事項
本記事は、Claude CodeのCLAUDE.mdを活用した薬局DXに関する情報提供を目的として作成されたものです。記事に示す実装例はあくまで参考であり、実運用ではClaude Code公式ドキュメントの最新仕様、各薬局の運営方針、最新の通知・疑義解釈に基づき調整が必要です。CLAUDE.mdの内容は薬局全体の業務に影響するため、運営会社・法務担当・情報セキュリティ責任者と連携した運用設計を推奨します。記事に記載されたAIツールの使用結果や、それに基づく経営判断・臨床判断について、筆者および本ブログは一切の責任を負わないものとします。
本記事は生成AIを活用して作成しています。内容については十分に精査しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点がございましたら、コメントにてご指摘いただけますと幸いです。
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注意: 患者さんの服薬指導や相談内容を録音・文字起こしする場合は、必ず事前に利用目的、保存方法、利用範囲を説明し、同意を得たうえで運用する必要がある。 また、患者情報や薬歴に関わる情報を取り扱う場合は、個人情報保護、医療情報システムの安全管理、所属組織の規程に従うことが前提である。

