この記事は、薬学部で長年教えた元大学教授の視点で、国試の問題が解けない理由を読者ごとに異なる階層構造(大学薬学・高校・中学)で捉え直すアプローチです。これまでの解説では届きにくい「自分の現在地を見極めて必要な階層から学び直す」ための実践的ガイドです。
🔍 問題(第111回薬剤師国家試験 問173より)
区分:一般問題(薬学理論問題)/科目:薬剤(薬物動態学)
📚 出典:厚生労働省「第111回薬剤師国家試験問題及び解答について」(令和8年2月21日、2月22日実施)
- 問題PDF:1日目(3) 一般問題(薬学理論問題)【薬理、薬剤、病態・薬物治療】
- 正答PDF:第111回薬剤師国家試験 試験問題正答
- 正誤表PDF:第111回薬剤師国家試験 正誤表等(問173への訂正は記載なし)
※本記事は厚生労働省・試験委員・薬剤師国家試験の出題機関とは一切無関係の個人による解説です。
問173 体重 60 kg の患者にアミノグリコシド系抗菌薬ゲンタマイシンを静脈内投与したところ、以下の薬物動態パラメータが得られた。
(薬物動態パラメータ)
全身クリアランス(CLtot)75.0 mL/min、糸球体ろ過速度(GFR)62.5 mL/min、
尿中未変化体排泄率(fe)0.92、血漿タンパク非結合率(fp)0.90その後、急性腎障害を発症したため、CLtot が 40.0 mL/min に、GFR が 27.8 mL/min に、fe が 0.85 に低下した。本患者におけるゲンタマイシンのクリアランスに関する記述として、正しいのはどれか。2つ選べ。ただし、急性腎障害の前後で fp は変化しないものとする。
- 腎障害前のゲンタマイシンの糸球体ろ過クリアランスは 62.5 mL/min である。
- 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンの腎排泄には尿細管分泌が関与する。
- 腎障害の有無によらず、ゲンタマイシンは尿細管から再吸収されやすい。
- ゲンタマイシンの腎クリアランスは腎障害によって変化しない。
- ゲンタマイシンの腎外クリアランスは腎障害の前後でほぼ一定である。
※問題文・選択肢は厚生労働省公開資料から引用。詳細出典は本節冒頭参照。
✅ 正解と一般的な解説
正解:2 と 5
各選択肢の正誤は、与えられたパラメータからクリアランスを「成分」に分解することで、数値計算から判定できます。
クリアランス4成分の分解計算
| 算出する量 | 公式 | 腎障害前 | 腎障害後 |
|---|---|---|---|
| 腎クリアランス CLr | CLtot × fe | 75.0 × 0.92 = 69.0 mL/min | 40.0 × 0.85 = 34.0 mL/min |
| 腎外クリアランス CLnr | CLtot − CLr | 75.0 − 69.0 = 6.0 mL/min | 40.0 − 34.0 = 6.0 mL/min |
| 糸球体ろ過クリアランス CLgf | GFR × fp | 62.5 × 0.90 = 56.25 mL/min | 27.8 × 0.90 = 25.02 mL/min |
| 正味の尿細管寄与 CLtub,net (本記事での説明用語) | CLr − CLgf (>0なら分泌寄与優位、<0なら再吸収寄与優位) | 69.0 − 56.25 = +12.75 mL/min | 34.0 − 25.02 = +8.98 mL/min |
📝 注:CLtub,net は「分泌クリアランス(CLs)と再吸収クリアランス(CLrea)を相殺した正味の値」であり、個別の CLs と CLrea を本問の数値だけで分離することはできません。本問では CLtub,net > 0 なので、「分泌寄与が再吸収寄与を上回る(正味で分泌方向)」と判断します。
選択肢ごとの判定
| 選択肢 | 正誤 | 判定根拠 |
|---|---|---|
| 1. CLgf = 62.5 mL/min | ✗ | fp = 0.90 を考慮していない。正しくは GFR × fp = 56.25 mL/min |
| 2. 尿細管分泌が関与する | ⭕ | 本問の数値上、前後とも CLr > CLgf(+12.75、+8.98 mL/min)→ 糸球体ろ過のみでは説明できず、正味で尿細管分泌方向の寄与がある |
| 3. 尿細管再吸収されやすい | ✗ | CLr > CLgf である以上、再吸収が優位とは言えない(正味で分泌方向の寄与が優位) |
| 4. 腎クリアランスは変化しない | ✗ | CLr が 69.0 → 34.0 mL/min と明確に低下 |
| 5. 腎外クリアランスはほぼ一定 | ⭕ | 本問の数値上、CLnr は 6.0 → 6.0 mL/min と同値 |
この結論「正解:2 と 5」は、厚生労働省公表の試験問題正答(問173 薬剤)と一致します。
⚠️ 本問の与件に基づく計算結果です。実際のゲンタマイシンの薬物動態(fe 値、分泌の寄与など)は文献・条件によって異なるため、「ゲンタマイシン=必ず尿細管分泌される薬物」と一般化して暗記するのは避けてください。あくまで与えられた数値を分解する手続きこそが本問の学習目的です。
🤔 なぜこの問題で詰まるのか — 躓きの構造を解剖する
正解の 2 と 5 は、両方とも「全身クリアランス(CLtot)を成分に分解する眼差し」を要求します。
選1の罠:「GFR = 糸球体ろ過クリアランス」と思い込む
選1の数値「62.5 mL/min」は問題文の GFR の値と一致しています。よって、GFR をそのまま糸球体ろ過クリアランスと等しいとみなすと、選1を「正しい」と誤読します。
しかし、糸球体で実際にろ過されるのは血漿タンパクと結合していない遊離型だけです。よって:
CL_gf = GFR × f_p
= 62.5 × 0.90
= 56.25 mL/min (≠ 62.5 mL/min)
→ fp の存在を忘れると、この選択肢を誤って正解にしてしまいます。
選2/3の判定軸:CLr と CLgf の大小比較
選2(分泌が関与)と選3(再吸収されやすい)は、いずれも「腎排泄の中身」を問うています。腎臓では、原尿が生成された後に 分泌(追加で排泄される) または 再吸収(血液側へ戻される) が起こります。
CLr = CLgf + CLs − CLrea
└─ろ過─┘ └分泌┘ └再吸収┘
- CLr > CLgf → 分泌の寄与が再吸収を上回っている(正味で分泌方向)
- CLr < CLgf → 再吸収の寄与が分泌を上回っている(正味で再吸収方向)
- CLr ≒ CLgf → ろ過のみで説明できる、または分泌と再吸収が相殺されている(イヌリンのように分泌・再吸収どちらもない指標物質と、両過程が拮抗している薬物の両方がありうる)
⚠️ 重要:CLr − CLgf から得られるのは「正味の尿細管寄与(CLtub,net)」であり、個別の分泌クリアランス(CLs)と再吸収クリアランス(CLrea)を本問の数値だけで分離することはできません。
本問の与件上は、前後とも CLr > CLgf なので、正味で分泌方向の寄与(選2が正)。一方、再吸収優位ではない(選3は誤)。
選4の罠:「fe が 0.92 から 0.85 にしか下がっていない」という錯覚
選4を選んでしまう典型的な思考は、「fe(尿中未変化体排泄率)は 0.92 → 0.85 とそれほど大きく変わっていないから、腎クリアランスもあまり変わらないのでは?」というものです。
しかし fe は全クリアランスに対する腎排泄の割合であり、CLr 自体は CLtot × fe で計算する必要があります。
CLr(前)= 75.0 × 0.92 = 69.0 mL/min
CLr(後)= 40.0 × 0.85 = 34.0 mL/min
→ CLtot 自体が大きく低下しているため、fe が微減でも CLr は約半分になります。「割合(fe)」と「絶対値(CLr)」を混同しないこと。
選5を選び損ねるパターン:「CLnr について考えたことがない」
選5(腎外クリアランスはほぼ一定)は、本問の与件から計算してみれば CLnr = 6.0 → 6.0 mL/min で同値とわかります。
しかし、「CLnr とは何か」「本問の与件のもとでなぜ前後で同値になるのか」という発想自体が薄いと、この選択肢を見ても判断できません。
CLnr = CLtot − CLr = 75.0 − 69.0 = 6.0(前)
= 40.0 − 34.0 = 6.0(後)
一般に、腎外クリアランス(CLnr)には肝代謝・胆汁排泄などが含まれます。本問では CLnr は 6.0 mL/min と CLtot に占める割合が小さく、与えられた数値上は前後で変化しません。
⚠️ 一般論としての注意:実際の臨床では、腎障害・尿毒症・炎症状態などで肝薬物代謝酵素やトランスポーター、タンパク結合が変化し、腎外クリアランスも変動することがあるため、「腎障害なら必ず CLnr は不変」と一般化して暗記しないでください。本問はあくまで与えられた数値を分解する手続きを学ぶ問題です。
💡 公式暗記の限界 — 設問が変わると対応できなくなる
「fe = 尿中未変化体排泄率」「CLr = CLtot × fe」と公式だけ覚えて正解にたどり着いた場合、設問の数値や薬物が変わるだけで手が止まるでしょう。
たとえば、もし設問が次のように変わったら、どう対応しますか?
- 「血漿タンパク結合率(PB)が 80% の薬物の CLgf は GFR の何倍か?」
- 「ある薬物の CLr が CLgf より小さい場合、腎臓で何が起きているか?」
- 「肝機能低下で CLtot が低下した場合、fe と CLnr はどう変化するか?」
- 「fe = 1.0 の薬物の CLnr は?」
これらに即答するには、この問題の背景にある原理を理解している必要があります。
その原理は、たった2つの本質に集約されます:
🎓 クリアランスの本質:加成性(足し算で成り立つ)× 経路の分離可能性
全身クリアランス(CLtot)は、腎・肝・その他の各臓器が薬物を除去する速度の和として表せる:
CLtot = CLr + CLnr = CLr + CLh + CLother
さらに腎クリアランスの内部も、ろ過・分泌・再吸収の和(と差)として分解できる:
CLr = CLgf + CLs − CLrea
国試の数値計算では、まずこの分解式に従って経路ごとに分けて考えることが第一近似となる。
この「足し算で成り立つ/経路ごとに分けて考える」発想は、中学理科の「全体 = 部分の和」と同じ論理です。
💡 ただし、生理学・病態学の観点では、ある経路の変動が他の経路にも影響することがあります(例:腎障害が肝代謝酵素・トランスポーター活性に影響するケース)。「各経路を分けて足し合わせる」考え方は本問のような数値計算問題を解くための第一近似として理解し、臨床応用時にはより深い検討が必要です。
🔍 まずは自己診断:あなたの躓きの階層は?
薬学生の理解レベルは多様です。自分がどの階層で躓いているかを見極めることが学び直しの第一歩。以下の3つの質問に答えてみてください。
📋 自己診断クイズ(30秒)
Q1. 「糸球体ろ過クリアランス CLgf = GFR × fp」という式について、なぜ fp をかける必要があるかを15秒以内に説明できますか?
→ NO なら【中層・高校生物/高校化学】が出発点
Q2. 「全身クリアランス=腎クリアランス+腎外クリアランス」のように、「全体は部分の和」として分解する発想に違和感がありますか?
→ YES(違和感がある)なら【基礎・中学理科】が出発点
Q3. 上の Q1・Q2 はクリアできるが、ろ過・分泌・再吸収の3つを組み合わせて CLr を分解する局面で詰まる
→ 【表層・大学薬学】の問題です。CLr = CLgf + CLs − CLrea の枠組み(次節)を確認してください。
→ 自分のレベルに応じて、次の章のどこから読むか選んでください。全員が中学から戻る必要はありません。
🧭 躓きの階層別 — どこから学び直すかを選ぶ
自己診断の結果に応じて、該当する階層から読み進めてください。すでに腑に落ちている階層はスキップしてOKです。
【表層】Q3 に該当した方 — 大学薬学の「クリアランスの分解」を整える
ここに該当する方は、ろ過・分泌・再吸収・腎外排泄の4要素に分けて扱う訓練を集中的に行うのが効率的です。
<h4>整理すべき4つのクリアランス成分</h4>
- CLgf 糸球体ろ過 = GFR × fp(足し算)
- CLs 尿細管分泌 トランスポーター能動輸送(足し算)
- CLrea 尿細管再吸収 尿側→血液側に戻る(引き算)
- CLh 肝代謝・胆汁排泄など
4つの「キー方程式」
| 式 | 意味 |
|---|---|
| CLtot = CLr + CLnr | 加成性(経路の分離可能性、第一近似) |
| CLr = CLtot × fe | fe(尿中未変化体排泄率)の定義 |
| CLgf = GFR × fp | タンパク非結合分のみがろ過される |
| CLtub,net = CLr − CLgf | +なら正味で分泌寄与優位、−なら正味で再吸収寄与優位、0ならろ過のみ・もしくは分泌と再吸収が相殺 |
演習:本問のデータで4経路を分解してみる
| 量 | 腎障害前 | 腎障害後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| CLtot | 75.0 | 40.0 | ↓ |
| CLr = CLtot × fe | 69.0 | 34.0 | ↓ |
| CLnr = CLtot − CLr | 6.0 | 6.0 | → 不変 |
| CLgf = GFR × fp | 56.25 | 25.02 | ↓ |
| CLtub,net = CLr − CLgf | +12.75 | +8.98 | ↓(正の値を維持=分泌寄与優位) |
→ この一覧表を白紙から再構築できるかが、表層レベルの到達目標です。
→ もしここで詰まる感覚があれば、下の【中層】へ。
simulator
【中層】Q1 で「NO」だった方 — 高校生物・高校化学を整える
「なぜ CLgf に fp をかけるのか?」が腑に落ちないなら、その背景には腎ネフロンの構造と血漿タンパク結合の概念があります。
① 高校生物の腎臓・ネフロンを土台にした「薬物排泄の3過程」
高校生物で学ぶ腎臓・ネフロンの理解を土台に、薬学では薬物排泄をろ過・分泌・再吸収の3過程として整理します。腎単位(ネフロン)における各過程は次の通りです:
- 糸球体ろ過(filtration):糸球体毛細血管の壁から、分子量の小さいもの・タンパク非結合分だけが原尿に漉し出される。タンパク結合した薬物はろ過されない。
- 尿細管分泌(secretion):尿細管のトランスポーターを介して、主に血中の遊離型薬物が血液側から尿側へ移行する。結合型は直接輸送されにくいが、遊離型との平衡を通じて遊離型濃度を補う「貯蔵庫」として働く。
- 尿細管再吸収(reabsorption):尿側から血液側へ薬物が戻される。脂溶性が高い・受動拡散しやすい薬物で起こりやすい。
② 高校化学:「化学平衡」の考え方をタンパク結合に応用する
高校化学で学ぶ「化学平衡」「可逆反応」の考え方を、薬学の血漿タンパク結合に応用すると、薬物はタンパク結合分と遊離分(非結合分)の2つの状態にあり、両者は動的平衡の関係にある、と理解できます。
📘 学習指導要領との関係:高校化学の直接の単元は「化学平衡とその移動」であり、薬物-タンパク質結合そのものは扱いません。本記事ではその考え方を薬学に応用しています。
出典:高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説(文部科学省)
薬物 + タンパク質 ⇌ 薬物-タンパク質複合体
(遊離型) (結合型)
- 遊離分の割合 = fp(fraction unbound in plasma)
- 結合分の割合 = 1 − fp
糸球体は毛細血管のフィルターとして働くため、結合型の巨大分子はろ過されず、遊離型のみが原尿に到達します。だから:
CLgf = GFR × fp
この式の fp は「ろ過されうる遊離分の割合」を表す係数なのです。
→ 上記すべてが整理できているのに解けないなら、下の【基礎】を確認してください。
【基礎】Q2 で「YES」だった方 — 中学理科の「全体は部分の和」を確認
「全体は部分の和」「全体から一部を引けば、残りがわかる」という発想に違和感がある方は、ここから戻りましょう。
自己診断 Q2 で違和感を覚えた方は、ここが学び直しの出発点になります。
中学1年・数学/中学2年・理科:「分けて考える」発想
- 中学1年・数学:「等式の性質」「方程式の解き方」など、A = B + C なら C = A − B が常に成り立つ。
- 中学2年・理科:「動物のからだのつくりと働き」の単元で、消化・循環・呼吸・排出の各器官系を分けて学ぶ。
📘 学習指導要領との関係:中学理科で学ぶ「器官系の理解」は、薬物クリアランスにおける「腎排泄と腎外消失を分けて考える」発想の基礎になります。「腎臓と肝臓を完全に独立に扱える」という意味ではなく、第一近似として分解して考える視点を中学レベルまで遡って獲得するのが目的です。 出典:中学校学習指導要領(平成29年告示)解説(文部科学省)— 数学編「等式の性質」(第1学年)、理科編 第2分野「動物のからだのつくりと働き」(第2学年)
この発想が薬剤の世界で活きる場面
| 中学レベルの発想 | 薬剤での応用 |
|---|---|
| A = B + C | CLtot = CLr + CLnr |
| B = A × 割合 | CLr = CLtot × fe |
| 器官系を分けて捉える | 腎排泄と腎外消失を分けて計算する(CLr と CLnr) |
「全体を分けて、経路ごとに整理する」というたった1つの発想で、本問の選2・選5は数値計算から判定できるようになります。
すでにこの内容が腑に落ちている読者は、上の階層に戻って自分の躓き箇所を探してください。
🏛 知識の階層構造で整理する
- 加成性 CLtot = CLr + CLnr
- 腎排泄の3プロセス CLr = CLgf + CLs − CLrea
- fe、fp の意味
- ろ過・分泌・再吸収の3プロセス(高校生物「腎臓のはたらき」)
- タンパク結合と遊離(動的平衡 — 高校化学「化学平衡」)
- 経路ごとに分けて考える(中学2年理科「動物のからだのつくりと働き」)
- A = B + C ⇔ C = A − B(中学1年数学「等式の性質」)
このピラミッドは「読者がどの階層まで降りる必要があるか」を可視化したマップです。自分の現在地によって出発点は異なります:
- 表層だけで対応できる方 → CLr = CLgf + CLs − CLrea の3要素分解と、fe/fp の使い分けを徹底する
- 中層まで戻る必要がある方 → 高校生物の腎臓のはたらき、高校化学の化学平衡(結合・遊離)を復習
- 基礎まで戻る必要がある方 → 中学理科の人体器官系、中学数学の等式の性質に戻って「分けて足す」発想を再構築
全員が必ずしも最下層から始める必要はありません。
🎯 学び直しロードマップ — あなたの現在地に応じた経路
自己診断の結果に応じて、開始 Step を選択してください。所要時間は初学者の目安です。
- 🟢 表層レベルの方(Q1・Q2 YES、Q3 に該当)→ Step 4 から開始
- 🟡 中層レベルの方(Q1 で NO、Q2 で YES)→ Step 2 から開始
- 🔴 基礎レベルの方(Q2 で YES = 違和感あり)→ Step 1 から開始
- Step 1:中学理科・数学の「分けて足す」を取り戻す(目安30分)
- 中学2年・理科「動物のからだのつくりと働き」(泌尿器系と循環器系を分けて理解する)
- 中学1年・数学「等式の性質」(A = B + C ⇔ C = A − B)
- ポイント:腎臓と肝臓は別の臓器、別の経路。まずは経路ごとに分けて整理するという見方を体に入れる。
- Step 2:高校生物・化学の腎臓と化学平衡を概観(目安2時間)
- 高校生物(生物基礎では恒常性、発展的に生物で腎臓・ネフロンを確認)の「腎臓のはたらき」
- 高校化学「化学平衡」(結合と遊離の動的平衡)
- ポイント:糸球体は分子量の小さい遊離型しか通さないフィルターであることを視覚的に理解。
- Step 3:薬剤・薬物動態学の「クリアランス」章を読み直す(目安1時間)
- 標準的な薬物動態学テキストの「腎クリアランス」「タンパク結合」の節を再読
- ポイント:4つのキー方程式(前述)を白紙に書けるまで反復。
- Step 4:本問のデータで4経路を分解する演習(目安30分)
- 本記事の「演習:本問のデータで4経路を分解してみる」表を白紙から再構築できるか確認
- 余裕があれば、付属シミュレーターで GFR・fp・fe のスライダーを動かし、どのパラメータがどの量を変えるかを体感する。
📚 関連する国試問題
- 第111回 問45(薬剤・必須):イヌリンの Cp ≒ C原尿 < C尿 — クリアランスの「成り立ち」(自由ろ過+水再吸収)
→ 本問173はその続編。「イヌリンという指標物質」から「実薬の多経路クリアランス」へ発展する設計です。 - 第111回 問174(薬剤・薬学理論):急速静注後に定速静注を開始したときの定常状態血中濃度から、定速静注速度(mg/h)を逆算する問題(クリアランスと投与設計の接続)
※ 関連問題は、厚生労働省公開資料(問題PDF・正答PDF)で内容と正答を確認したもののみ掲載しています。
・問45 正答:3(Cp ≒ C原尿 < C尿)
・問174 正答:5(35 mg/h)
📎 出典PDF:厚生労働省「第111回薬剤師国家試験問題及び解答について」(令和8年2月21日、2月22日実施) — 問題PDF・正答PDF・正誤表PDFが同ページからダウンロード可能
📝 まとめ — 元教授からの一言
本問の数値処理は、たった2つの発想で整理できる問題です:
- 加成性:全体(CLtot)は部分(CLr、CLnr)の和
- タンパク非結合分のみがろ過される:CLgf = GFR × fp
しかし、この2つの発想に至るには、読者ごとに異なる階層を経る必要があります。
- 大学薬学の公式体系で詰まる方
- 高校生物のネフロン構造で詰まる方
- 中学理科の「全体を部分に分けて考える発想」で詰まる方
「自分の階層を見極めて、必要なステップから始めること」こそが、PK公式の暗記から論理体系への移行を支える本質です。
クリアランス公式は、バラバラに覚える対象ではなく、加成性と経路分解の考え方という2つの軸で支えられた一本の論理体系として捉えてください。本問173はその「分解する眼差し」を試す好題です。
本記事の自己診断で自分の現在地を特定し、シミュレーターで4成分の動きを体感しながら、必要なステップから着実に積み直してください。
薬学博士 有馬 英俊
元 熊本大学 製剤設計学 教授/現 第一薬科大学 教授/『最新製剤学[第4版]』編者/薬剤師
💌 ご意見・ご質問をお寄せください
本記事の内容に誤りや不明な点がありましたら、ぜひお知らせください。読者の皆さまからのフィードバックを真摯に受け止め、より正確で分かりやすい記事に改善してまいります。
「ここがまだ分からない」「別の問題も解説してほしい」などのご要望も大歓迎です。皆さまの声が次の記事のテーマになります。
📬 連絡手段
- 📧 メール:h-arima@pharmailab.net
- 💬 本記事下部の コメント欄
- 📰 メルマガに返信(購読者の方)
薬学博士 有馬 英俊

