ProTox-IIが実現するWebで試せる無料毒性予測。SMILES入力だけで33種類の毒性を一括評価し、創薬初期の安全性判断を加速します。
新薬開発において、候補化合物の毒性を早期に評価することは安全性の確保に不可欠です。しかし、動物実験には倫理的・時間的・費用的な負担が大きく、初期段階から効率的に毒性リスクを絞り込むための計算科学的アプローチへのニーズが高まっています。こうした課題に対応するのが、Webブラウザから誰でも無料で使える毒性予測ツール「ProTox-II」です。
ProTox-IIは、ドイツのシャリテ大学(Charité – Universitätsmedizin Berlin)とマックス・デルブリュック分子医学センター(MDC Berlin)が共同開発し、2018年にNucleic Acids Research誌に発表された計算毒性予測Webサーバーです。2024年には大幅に機能拡張された後継版「ProTox 3.0」もリリースされており、AI創薬の毒性評価における入口ツールとして世界中で広く活用されています。
本記事では、ProTox-IIの基本機能、33種類の毒性予測モデル、使い方、技術的な仕組み、そして最新版ProTox 3.0への進化までを詳しく解説します。この記事を読むことで、以下の内容が理解できます。
・ProTox-IIが予測できる33種類の毒性エンドポイントの内訳
・LD50値とGHS毒性クラス(Class I〜VI)の読み方
・SMILES・構造描画・化合物名など4つの入力方法
・Random Forest・SVM・Bernoulli Naive Bayesによる予測の仕組み
・ProTox 3.0(61モデル、深層学習対応)の新機能
・他の毒性予測ツールとの比較と使い分け
AI創薬・毒性評価・レギュラトリーサイエンスに関わる研究者・薬剤師の方にとって、ProTox-IIを実務に活用するための実践ガイドとなれば幸いです。
ProTox-II(Prediction of Toxicity II)は、シャリテ大学医学部のRobert Preissnerグループが開発・運営する無料の計算毒性予測プラットフォームです。2018年にBanerjee P らによってNucleic Acids Research誌に発表され(NAR 2018, 46(W1):W257-W263)、以降、毒性学者、規制機関、メディシナルケミストなど幅広いユーザーに利用されています。
ProTox-IIの大きな特徴は、分子類似性、ファーマコフォア(特徴的な化学的構造パターン)、フラグメント傾向、機械学習モデルの4つのアプローチを組み合わせて、33種類の毒性エンドポイントを一括予測できる点です。ログイン不要で、SMILES入力や構造描画だけで即座に予測結果を取得でき、学術・商業利用のいずれも無料です。
さらに、AI創薬の文脈では「3R原則(Replacement、Reduction、Refinement)」への貢献も注目されています。動物実験の前段階でProTox-IIによる計算予測を行うことで、明らかな毒性リスクを持つ化合物を早期に排除し、実験動物の削減につながる点が大きな社会的価値を持ちます。
URL:https://tox.charite.de/
ProTox-IIは以下の5つの主要カテゴリで合計33種類の毒性モデルを提供しています。
・急性毒性(経口毒性):LD50値(mg/kg)の予測と、GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)に基づく毒性クラス(Class I〜VI)の分類
・臓器毒性:肝毒性(Hepatotoxicity)の予測
・毒性学的エンドポイント:変異原性(Ames試験)、発がん性(Carcinogenicity)、細胞毒性(Cytotoxicity)、免疫毒性(Immunotoxicity)
・毒性学的経路(Tox21 AOPs):AhR、AR、AR-LBD、アロマターゼ、ER、ER-LBD、PPAR-γ、ARE、HSE、MMP、p53、ATAD5などの核内受容体・ストレス応答経路
・毒性標的:副作用に関連する15のタンパク質標的への結合予測
GHS毒性クラスは、予測されたLD50値に基づいて6段階に分類されます。Class I(≤5 mg/kg、飲み込むと致死)、Class II(5〜50 mg/kg、致死)、Class III(50〜300 mg/kg、有毒)、Class IV(300〜2000 mg/kg、有害)、Class V(2000〜5000 mg/kg、有害の可能性あり)、Class VI(>5000 mg/kg、非毒性)。この分類により、化合物の急性毒性リスクを直感的に把握できます。
ProTox-IIは完全に無料で、ログイン不要で利用できます。公式サイト(https://tox.charite.de/)にアクセスし、以下の4つの入力方法から好きなものを選べます。
・構造描画:Webインターフェース上で化学構造を直接描画できるJSMEエディタを搭載
・化合物名:IUPAC名、一般名、慣用名を入力するとPubChemとの連携で自動変換
・SMILES文字列:化学構造を表す記法で直接入力(最も効率的)
・Molファイル:.mol形式の構造ファイルをテキストとして貼り付け
予測の実行手順は非常にシンプルです。まず「Tox Prediction」ページにアクセスし、構造を入力します。次に予測したい毒性モデルを選択し(指定なしの場合は急性毒性と毒性標的がデフォルト)、最後に「Start Tox-Prediction」ボタンをクリックします。
予測結果には、予測LD50値(mg/kg)、予測毒性クラス、各モデルの予測精度と信頼性スコア、毒性プロファイルを視覚化したレーダーチャート、そして既知の急性毒性を持つ類似化合物3つが含まれます。研究者はこの情報を総合的に判断し、開発候補化合物の優先順位付けを行えます。
ProTox-IIの予測精度を支えるのは、毒性タイプに応じて最適化された複数の機械学習アルゴリズムです。
肝毒性・細胞毒性・変異原性・発がん性にはRandom Forest(RF、決定木のアンサンブル学習)が、Tox21由来の毒性学的経路にはRandom Forest+SVM(RBFカーネル)のアンサンブルモデルが、免疫毒性にはBernoulli Naive Bayesが採用されています。この「適材適所」のアルゴリズム選定が、各エンドポイントの高精度予測を実現しています。
化合物を機械学習モデルが扱える数値ベクトルに変換するため、2種類の分子フィンガープリントが使用されています。MACCS分子フィンガープリント(166ビット、化学的特徴の有無を表す)と、Morgan循環フィンガープリント(2048ビット、原子周辺の環境を数値化)を組み合わせることで、分子の構造的特徴を多角的に表現しています。
学習データソースには、Tox21アッセイ、Ames細菌変異試験、HepG2細胞毒性試験、免疫毒性試験などのin vitroデータに加え、発がん性・肝毒性などのin vivoデータが活用されています。
2024年にProTox 3.0がリリースされ、ProTox-IIから大幅に機能が拡張されました(Banerjee P et al., NAR 2024, 52(W1):W513)。ProTox 3.0の主な進化ポイントは以下の通りです。
・毒性モデル数:33種類から61種類へ拡張(28モデル追加)
・機械学習手法:Random Forest・SVMに加え、深層学習(Deep Neural Network)を導入
・新規臓器毒性:神経毒性、呼吸器毒性、心毒性、腎毒性
・新規エンドポイント:血液脳関門(BBB)透過性、生態毒性、臨床毒性、栄養毒性
・分子開始イベント(Molecular Initiating Events, MOE)の予測
・代謝予測の統合
これらの拡張により、ProTox 3.0は単なる毒性予測ツールを超え、医薬品開発の多段階にわたる安全性評価を支援する包括的なプラットフォームへと進化しています。URL:https://tox.charite.de/
ProTox-IIは無料毒性予測ツールの中で以下のポジションを占めます。
・admetSAR 3.0:119のADMETエンドポイントを包括予測。ProTox-IIより網羅性は高いが、ProTox-IIは毒性特化で専門性が高い。
・ADMETlab 3.0:Multi-task DMPNNで119項目予測。毒性予測の精度は高いが、構造描画入力などの使いやすさではProTox-IIが優位。
・SwissADME:薬物動態・ドラッグライクネス評価に特化。毒性予測機能は限定的。
・Toxtree:構造アラート(Brenk、Cramer等)ベースで、ProTox-IIとは異なるアプローチ。
実務的には、初期段階の毒性スクリーニングにProTox-IIまたはProTox 3.0を使い、詳細な毒性評価にはToxtreeやADMETlab 3.0を併用するのが効果的です。特にProTox-IIのレーダーチャートによる視覚的な毒性プロファイル表示は、研究者間のコミュニケーションにも役立ちます。
本記事では、無料の計算毒性予測Webサーバー「ProTox-II」について、その機能、33種類の毒性エンドポイント、使い方、技術的背景、そしてProTox 3.0への進化を解説しました。
ProTox-IIが創薬研究者にとって価値ある理由は、第一に分子類似性・ファーマコフォア・機械学習モデルを融合した33種類の包括的な毒性予測、第二にSMILES入力から構造描画まで4通りの入力方法によるアクセシビリティ、第三にレーダーチャートによる視覚的な結果表示です。さらに、2024年リリースのProTox 3.0では61モデル・深層学習対応と大幅にパワーアップしており、AI創薬の毒性評価プラットフォームとして更なる進化を遂げています。
ただし、計算予測はあくまで実験的検証の補助であり、動物試験やin vitro試験の代替ではありません。ProTox-IIによる予測結果を実験的検証と組み合わせ、3R原則に基づく責任ある創薬研究に活用してみてください。
・Banerjee P, Eckert AO, Schrey AK, Preissner R. ProTox-II: a webserver for the prediction of toxicity of chemicals. Nucleic Acids Research, 2018, 46(W1):W257-W263:https://academic.oup.com/nar/article/46/W1/W257/4990033
・Banerjee P, Kemmler E, Dunkel M, Preissner R. ProTox 3.0: a webserver for the prediction of toxicity of chemicals. Nucleic Acids Research, 2024, 52(W1):W513-W520:https://academic.oup.com/nar/article/52/W1/W513/7655780
・ProTox公式サイト:https://tox.charite.de/
本記事は、AI創薬における毒性予測ツールに関する情報提供を目的として作成されたものです。記事の内容は、公開時点で入手可能な文献・情報に基づいていますが、技術の進歩や新たな知見により、情報が変更される場合があります。記事に記載されたソフトウェアの使用結果や、それに基づく研究成果について、筆者および本ブログは一切の責任を負わないものとします。実際の創薬研究や臨床応用にあたっては、必ず最新の文献・公式ドキュメントを確認し、専門家の助言を得てください。
本記事は生成AIを活用して作成しています。内容については十分に精査しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点がございましたら、コメントにてご指摘いただけますと幸いです。
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