ADMETlab 3.0が実現するADMET評価の新基準。119エンドポイントを1つのプラットフォームで高精度に予測し、大規模スクリーニングを加速します。
新薬候補化合物のADMET特性(吸収・分布・代謝・排泄・毒性)を早期に予測することは、創薬の成功率を高めるために不可欠です。しかし、ADMETは多様なエンドポイントから構成されており、それぞれを個別に評価するのは非効率的です。こうした課題に対して、1つのプラットフォームで119もの包括的なエンドポイントを一括予測できるのが「ADMETlab 3.0」です。
ADMETlab 3.0は、中南大学のCaoグループが開発し、2024年にNucleic Acids Research誌に発表された次世代ADMET予測Webプラットフォームです。前版(ADMETlab 2.0)から31のエンドポイントが追加され、40万件を超える学習データ、Multi-task DMPNN(有向メッセージパッシングニューラルネットワーク)アーキテクチャ、不確実性推定、API機能など、大幅に機能が強化されています。
本記事では、ADMETlab 3.0の技術的な特徴、119エンドポイントの内訳、使い方、予測精度、そしてSwissADMEやpkCSMとの比較までを詳しく解説します。この記事を読むことで、以下の内容が理解できます。
・ADMETlab 3.0のMulti-task DMPNNアーキテクチャの仕組み
・119のADMETエンドポイント(前版+31)の内訳と臨床的意義
・SMILES入力からバッチ処理・API経由の大規模スクリーニングまでの使い方
・不確実性推定(Evidential Deep Learning)が創薬判断をどう支援するか
・SwissADME・pkCSM・admetSARとの精度比較と使い分け
AI創薬やADMET評価に関心のある研究者・薬剤師の方にとって、ADMETlab 3.0を日々の研究に導入するための実践的なガイドとなれば幸いです。
ADMETlab 3.0は、中南大学(中国・湖南省)の薬物科学研究所(Xiangya School of Pharmaceutical Sciences)のDongsheng Caoグループが開発した、無料の包括的ADMET予測Webプラットフォームです。2024年7月にNucleic Acids Research誌のWebサーバー特集号に発表された論文(Fu L et al., 2024, NAR, Vol.52(W1): W422-W431, DOI: 10.1093/nar/gkae236)で詳細が報告されています。
ADMETlab 3.0の大きな特徴は、119のADMETエンドポイントを1つのプラットフォームで一括予測できる網羅性です。前版のADMETlab 2.0(88エンドポイント)から31のエンドポイントが追加され、薬物動態の主要指標だけでなく、環境毒性や代謝部位予測など、実務で求められる幅広い特性をカバーします。学習データは40万件を超え、前版の1.5倍に拡大されています。
さらに、ADMETlab 3.0は学術・非営利利用であればログイン不要で無料で利用でき、研究者コミュニティから非常に高く評価されています。公開URLはhttps://admetlab3.scbdd.comで、SMILES入力だけで即座に予測結果を取得できます。
ADMETlab 3.0の予測精度を支える中核技術が、Multi-task DMPNN(Directed Message Passing Neural Network、有向メッセージパッシングニューラルネットワーク)と分子記述子を組み合わせたアーキテクチャです。DMPNNは分子を原子(ノード)と結合(エッジ)のグラフとして表現し、エッジ方向を考慮したメッセージパッシングで分子全体の特徴を学習する深層学習モデルです。
Multi-task学習の採用により、1つのモデルで複数のADMETエンドポイントを同時に予測できるため、計算速度が大幅に向上しました。また、関連するエンドポイント間で学習が共有されることで、単一タスク学習よりも頑健な予測精度が得られるメリットもあります。
ADMETlab 3.0では、DMPNN単独モデルと、分子記述子を追加したDMPNN-Desモデルの2種類が提供されています。DMPNN-Desは精度がわずかに高く、DMPNNは処理速度に優れるため、用途に応じて使い分けることができます。
ADMETlab 3.0が予測する119のエンドポイントは、以下の主要カテゴリに分類されます。
・物理化学的性質(Physicochemical Properties):分子量、LogP、LogS、TPSA、極性表面積など基本特性
・医薬品化学(Medicinal Chemistry):Lipinski則、Ghoseフィルター、PAINSアラート、合成容易性スコアなど
・吸収(Absorption):Caco-2透過性、ヒト腸管吸収、P-gp基質/阻害、経口バイオアベイラビリティ
・分布(Distribution):血液脳関門(BBB)透過性、血漿タンパク結合率、分布容積(VDss)、胎盤透過性
・代謝(Metabolism):CYP450(1A2、2C9、2C19、2D6、3A4)の基質と阻害、代謝部位予測
・排泄(Excretion):クリアランス、半減期
・毒性(Toxicity):hERG阻害、肝毒性、心毒性、発癌性、生殖毒性、眼刺激性、皮膚感作性、変異原性など
・環境毒性(Environmental Toxicity):魚毒性、水生生物毒性など、v3.0で新規追加
特に、v2.0から追加された31のエンドポイントには、環境毒性や薬物間相互作用の詳細評価、さらにヒト特異的な毒性エンドポイントなど、実務的に価値の高い指標が多く含まれています。
ADMETlab 3.0は前版からの3つの大きな進化により、実用性が飛躍的に向上しました。
Evidential Deep Learningという最新の機械学習手法を用いて、各予測値に信頼度スコアを付与します。これにより、「予測精度が高い化合物」と「学習データの範囲外で信頼性が低い化合物」を区別でき、候補化合物の選定における意思決定の質を高めます。従来のADMET予測ツールの多くは単純な予測値のみを返すため、研究者が結果の信頼性を判断する手がかりがありませんでした。
プログラマティックアクセス用のAPIが新たに提供され、Pythonスクリプトなどから数千〜数万の化合物を自動で評価できます。バーチャルスクリーニング後のADMETフィルタリングや、データパイプラインへの組み込みが容易になりました。
予測結果だけでなく、「この化合物を次のステップに進めるべきか」を判断する支援情報が提供されます。各エンドポイントに対する許容範囲や、総合的な薬物らしさの評価が視覚的に表示されます。
ADMETlab 3.0の使い方は非常にシンプルです。以下の手順で予測結果を取得できます。
Webブラウザでhttps://admetlab3.scbdd.comにアクセスし、SMILES形式で化合物を入力します。単一分子の評価、テキストファイルによる一括入力、SDFファイルのアップロードに対応しています。モデルとして「DMPNN」と「DMPNN-Des」のいずれかを選択でき、予測が完了すると119の全エンドポイントの結果が表形式で表示されます。結果はCSVやPDFでダウンロードでき、不確実性スコアも確認できます。
大規模スクリーニングの場合は、APIを利用します。APIドキュメントに従ってPythonやR等のスクリプトから直接リクエストを送信でき、数千〜数万化合物の自動評価が可能です。
URL:https://admetlab3.scbdd.com
ADMETlab 3.0は、他のADMET予測ツールと比較して以下の位置づけにあります。
・SwissADME:BOILED-Eggモデルによる消化管吸収・BBB透過の直感的な視覚化が強み。ドラッグライクネス評価も充実。ADMETlab 3.0は網羅性と精度で上回り、特に毒性予測や詳細なPK予測で優位です。
・pkCSM:グラフベースシグネチャによる独自の予測。28エンドポイントでADMETlab 3.0より少ないものの、特定エンドポイントでは独自の強みを発揮します。
・admetSAR 3.0:分子最適化モジュールADMETopt搭載。ADMETlab 3.0は予測精度で全体的に優れていますが、構造改善提案機能はadmetSARに軍配が上がります。
・ADMET-AI:2024年にBioinformatics誌に発表された別のツール。Chempropベースの深層学習で、大規模ライブラリ評価に特化しています。
実務的には、初期スクリーニングにSwissADMEで直感的に評価し、詳細な網羅的評価にADMETlab 3.0を使うという使い分けが効果的です。大規模スクリーニングではAPIを活用したADMETlab 3.0またはADMET-AIが最適です。
本記事では、次世代ADMET予測プラットフォーム「ADMETlab 3.0」について、技術的な特徴、119エンドポイントの内訳、使い方、新機能、そして他ツールとの比較を解説しました。
ADMETlab 3.0がAI創薬研究者にとって価値ある理由は、第一に119エンドポイントと40万件超の学習データによる圧倒的な網羅性、第二にMulti-task DMPNNと不確実性推定による高精度で信頼性の高い予測、第三にAPI機能による大規模バッチ処理対応です。無料でログイン不要という手軽さも大きな魅力であり、2024年のNucleic Acids Research論文発表以降、ADMET予測の新しい標準ツールとしての地位を確立しつつあります。
AI創薬やADMET評価に携わる研究者の方は、ぜひADMETlab 3.0をバーチャルスクリーニング後のフィルタリングやリード最適化に活用してみてください。SwissADMEやpkCSMと併用することで、より多角的で信頼性の高いADMET評価が実現します。
・Fu L, Shi S, Yi J, Wang N, He Y, Wu Z, Peng J, Deng Y, Wang W, Wu C, Lyu A, Zeng X, Zhao W, Hou T, Cao D. ADMETlab 3.0: an updated comprehensive online ADMET prediction platform enhanced with broader coverage, improved performance, API functionality and decision support. Nucleic Acids Research, 2024, 52(W1):W422-W431:https://academic.oup.com/nar/article/52/W1/W422/7640525
・ADMETlab 3.0公式サイト:https://admetlab3.scbdd.com
・ADMETlab 2.0論文(NAR 2021):https://academic.oup.com/nar/article/49/W1/W5/6249611
本記事は、AI創薬におけるADMET予測プラットフォームに関する情報提供を目的として作成されたものです。記事の内容は、公開時点で入手可能な文献・情報に基づいていますが、技術の進歩や新たな知見により、情報が変更される場合があります。記事に記載されたソフトウェアの使用結果や、それに基づく研究成果について、筆者および本ブログは一切の責任を負わないものとします。実際の創薬研究や臨床応用にあたっては、必ず最新の文献・公式ドキュメントを確認し、専門家の助言を得てください。
本記事は生成AIを活用して作成しています。内容については十分に精査しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点がございましたら、コメントにてご指摘いただけますと幸いです。
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