１．はじめに
医療業界は今、大きな転換期を迎えています。その中心にあるのが、デジタルトランスフォーメーション（DX）という新たな流れです。特に2025年4月から始まる電子カルテ情報共有サービスは、全国の医療機関や薬局の連携を飛躍的に強化すると注目されています。そして、この画期的な取り組みを支える技術が「HL7 FHIR（Fast Healthcare Interoperability Resources）」です。
この記事では、電子処方箋をはじめとする医療DXの鍵となるHL7 FHIRの基礎から最新動向までを、分かりやすく解説します。医療研究者をはじめ、医療の未来に関心を持つ皆様に向けて、その重要性と可能性を明らかにしていきます。
２．電子処方箋の導入におけるHL7 FHIRの重要性
2025年4月から日本では電子カルテ情報共有サービスが本格的に運用されます。その中核技術として採用されているのがHL7 FHIR（Fast Healthcare Interoperability Resources）です。FHIRは医療情報を標準化し、安全かつ効率的に共有するための国際規格です。
HL7 FHIRは、医療情報を細かな単位（リソース）に分割して取り扱う技術です。リソースは各々が独立しており、固有のアドレス（URI）で識別されます。これによりデータの所在が明確化され、医療情報を簡単に検索・取得することができます。
FHIRでは、REST (REpresentational State Transfer) という一般的なウェブ通信プロトコルを利用します。この通信方法は世界的に広く採用されており、開発者が容易に利用できるため、生産性が向上します。また、FHIRリソースは、特定の用途に合わせてプロファイル（特定用途向けの制約）や拡張（エクステンション）を設定可能で、柔軟性に優れています。
３．電子カルテ情報共有サービスの概要
電子カルテ情報共有サービスは「全国医療情報プラットフォーム」の一部として開発され、全国の医療機関や薬局が患者情報をスムーズに共有できる仕組みです。このサービスにより、診療情報提供書の電子化、健康診断結果の共有、患者本人が自身の医療情報を簡単に閲覧できるようになります。
この取り組みは、2024年度の診療報酬改定でも「医療DX推進体制整備加算」として評価されており、医療DXの推進力として期待されています。
４．日本でのHL7 FHIRの具体的実装状況
日本ではFHIRの実装が、JP_CoreやJP_CLINSなどの独自のガイドラインに基づいて行われています。特にJP_CLINSは、電子カルテ情報共有サービスにおいて、アレルギー情報、傷病名、検査結果、処方依頼情報など重要な医療情報を扱うための具体的な仕様を規定しています。
これらの仕様書は継続的にアップデートされており、医療機関が円滑にFHIRを導入できるよう支援しています。
５．医療機関が取り組むべきHL7 FHIRへの対応
医療機関がHL7 FHIRを利用した電子処方箋や情報共有を導入するには、電子カルテのシステム改修やデータ変換サーバーの設置が必要です。導入方式にはファサード型（その都度データ変換）とリポジトリ型（あらかじめ変換データを保存）があり、施設の状況に応じて適切な方式を選択する必要があります。
また、データ交換に伴い通信量が増えるため、ネットワークやセキュリティ対策の強化も不可欠です。
６．HL7 FHIR導入のメリットと今後の展望
FHIRの導入によって、患者は全国どこの医療機関でも迅速かつ質の高い医療サービスを受けられるようになります。医療機関は情報管理の効率化や業務負担の軽減が期待できます。また、保険者も効率的な医療管理と迅速な保健指導が可能になります。
今後、FHIRの導入は全国の医療機関へと広がり、共有可能な情報も徐々に拡充される見込みです。さらに、2027年度には標準型電子カルテの本格的な導入が始まり、中小規模の医療機関でもFHIR導入が進むでしょう。
７．国際動向と日本の対応
世界的にFHIR導入は進んでおり、特に米国では政府の規制により導入が急速に進展しています。一方、日本は診療報酬改定など間接的な誘導策を取っていますが、地域医療連携が未整備な状況から一気にFHIRを導入するという特徴があります。このアプローチがどのような成果をもたらすのか、今後の動向が注目されます。
８．まとめ
電子処方箋の導入に伴う医療DXの推進において、HL7 FHIRは欠かせない技術となっています。FHIRを導入することで患者中心の質の高い医療が実現し、医療現場の負担も軽減されます。日本の医療界がFHIRを通じてどのような変革を遂げるか、今後の展開が楽しみです。
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