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2025年 医療AIによる画像診断支援の最前線!診療報酬改定で変わる医師の働き方とは?

1.はじめに

膨大な数の医用画像を読影し、診断を下す業務は、高い集中力と専門知識を要し、心身ともに大きな負担がかかるのではないでしょうか。もし、その業務を強力にサポートしてくれる頼れる「パートナー」がいたら、どう思われますか? 近年、そのパートナーとして大きな注目を集めているのが、AI(人工知能)を活用した画像診断支援技術です。

本記事では、医用画像とAIの専門家が、2025年現在の日本の医療現場におけるAI支援のリアルな現状を、分かりやすく解説します。AIはもはや遠い未来の技術ではありません。診療報酬改定など国の後押しもあり、私たちの臨床現場に急速に普及し始めています。この記事を読めば、AIがもたらす変化の波に乗り遅れることなく、自院での活用を具体的にイメージできるようになるはずです。


2.医療AIの「今」を知る – 国も認めた診断パートナーの登場

「AIが診断する」と聞くと、少しSFのような響きがあるかもしれませんが、医療AIはすでに国から正式に認められた「医療機器」として、多くの臨床現場で活躍しています。これらのAIは、「プログラム医療機器(SaMD: Software as a Medical Device)」と呼ばれ、医薬品や医療機器の有効性・安全性を審査するPMDA(医薬品医療機器総合機構)によって、厳格な審査を経て承認されています。

現在、日本で承認されているSaMDは、内視鏡、胸部X線写真、CT、MRI、乳腺マンモグラフィなど、非常に幅広い領域に及んでいます。これらは、病変の候補を検出して医師の注意を促したり、複雑な画像の解析を補助したりすることで、診断の精度向上や読影時間の短縮に貢献しています。もはやAIは「研究段階の技術」ではなく、日々の診療を支える信頼できる「実用的なツール」として、私たちのすぐそばまで来ているのです。


3.AI導入を力強く後押し!診療報酬改定という追い風

医療現場へのAI導入を加速させる大きな要因となっているのが、国の制度的な後押し、特に診療報酬改定です。2024年度の診療報酬改定では、医療AIの活用を推進する上で画期的な内容が盛り込まれました。これは、国がAIの価値を公的に認め、その普及を本格的にサポートし始めたという明確なメッセージと言えるでしょう。

特に重要なポイントは2つあります。1つ目は、内視鏡分野におけるAI加算の新設です。大腸内視鏡検査時に、病変検出を支援するAIソフトウェア(例:「EndoBRAIN-EYE」や「CAD EYE」など)を使用した場合に、新たに点数が算定できるようになりました。これは、AIの使用が直接的な経済的インセンティブに繋がった初のケースであり、他の領域への波及も期待されます。

2つ目は、画像診断管理加算3におけるAIの安全管理体制の要件化です。これは、AIを安全に運用するための院内体制(責任者の配置や関連学会の指針遵守など)を整備することが、診療報酬の施設基準として明記されたことを意味します。これにより、AI導入が単なる「機器の購入」ではなく、「医療安全管理の一環」として位置づけられ、質の高いAI運用が促進されることになります。


4.現場でのAI活用事例 – 医師の “第3の目” はどう機能するのか?

では、実際に臨床現場でAIはどのように医師をサポートしているのでしょうか。ここでは、代表的な2つの領域における活用事例をご紹介します。AIはまさに、熟練した専門医の隣で所見をダブルチェックしてくれる、「第3の目」のような存在として機能します。

4.1.【内視鏡分野】見逃しを防ぐ鋭い観察眼

大腸内視鏡検査では、微小ながんやポリープの見逃しが課題となることがあります。ここにAIが登場します。AIは、内視鏡のライブ映像をリアルタイムで解析し、がんやポリープが疑われる領域をモニター上で瞬時にハイライトします。これにより、医師は病変に気づきやすくなり、見逃しのリスクを低減させることが期待できます。2024年度の診療報酬改定で加算対象となったことからも、その有効性への期待の高さがうかがえます。これは、患者さんの早期発見・早期治療に直結する、非常に価値のある支援です。

4.2.【放射線分野】膨大な画像から異常の候補を検出

胸部X線写真やCTなど、放射線科医が読影する画像は膨大な数にのぼります。特に健診などでは、正常な画像の中からごくわずかな異常所見を見つけ出さなければなりません。AIは、こうしたスクリーニング業務で真価を発揮します。例えば、肺がんの初期症状である小さな結節影の候補を自動で検出し、マーキングしてくれます。これにより、医師はまずAIが示した箇所を重点的に確認すればよくなり、読影の効率が飛躍的に向上します。もちろん、最終的な診断は医師が行いますが、AIによるスクリーニングは、医師がより重要な判断に集中するための強力なサポートとなるのです。


5.AIを安全に使いこなすためのルールブック – 学会指針の重要性

高性能なAIを導入したとしても、それを安全かつ有効に活用するための「運用ルール」がなければ、宝の持ち腐れになってしまいます。そこで重要になるのが、日本医学放射線学会(JRS)などが公表している「臨床使用に関する管理指針」です。これは、医療現場でAIを安全に運用するための、いわば公式なルールブックです。

この指針では、AIの導入にあたり、医療機関が整備すべき具体的な体制について定められています。例えば、「AIの安全管理を行う責任者(放射線診断専門医など)を配置すること」「誰が、いつ、どのAIを使用したかといった記録を帳簿で管理すること」「AIの使用者に対して、年に1回以上の研修を実施すること」などが求められます。これらのルールは、AIの性能を正しく理解し、万が一問題が発生した際にも迅速に対応できる体制を確保するために不可欠です。前述の通り、診療報酬(画像診断管理加算3)の施設基準にも、この指針の遵守が盛り込まれており、安全な運用体制の構築は避けては通れない必須事項となっています。


6.AIと情報を繋ぐ”共通言語” – 標準化とセキュリティの課題

AIが画像から得た情報を、電子カルテやレポートシステムにスムーズに連携させるためには、システム間でデータをやり取りするための「共通言語」が必要です。その役割を担うのが、FHIR(ファスト・ヘルスケア・相互運用性リソース)やDICOMwebといった次世代の医療情報標準規格です。これらの規格に対応することで、「AIが検出した病変候補の位置情報や計測値を、自動で読影レポートに転記する」といった、よりシームレスな連携が可能になり、医師の事務的な作業負担を大幅に削減できます。

また、AIの利用、特にクラウドサービスを介してAIを利用する際には、医療情報セキュリティの確保が極めて重要です。厚生労働省が公表している「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、患者さんの機密情報を守るための厳格なルールが定められています。AIベンダーと医療機関の間で責任範囲を明確にし、不正アクセスや情報漏洩を防ぐための対策を徹底することが求められます。AI導入を検討する際は、そのAIが最新の標準規格やセキュリティガイドラインに準拠しているかを確認することが、将来的な拡張性と安全性を担保する上で非常に重要です。


7.AIは成長し進化する – 「育てるAI」を支えるIDATEN制度

従来の医療機器は、一度導入するとその性能は基本的に変わりませんでした。しかし、AIは違います。AIの最大の特徴は、新しいデータを学習することで、購入した後も性能が向上していく「成長するツール」である点です。例えば、より多くの症例データを学習することで、病変の検出感度が上がったり、正常な部分を異常と間違える「偽陽性」が減ったりといった進化が期待できます。

このAIの「成長」を、日本の制度が後押ししています。それがIDATEN(医療機器変更計画確認申請制度)です。通常、医療機器の性能に関わる変更を行うには、その都度PMDAの承認を取り直す必要があり、多くの時間がかかりました。しかしIDATENを活用すれば、あらかじめPMDAに変更計画の確認を受けておくことで、その計画の範囲内での性能向上であれば、迅速な手続きで臨床現場に反映させることができます。これにより、AI開発企業は継続的に製品をアップデートしやすくなり、医療機関は常に最新かつ高性能なAIを利用できるというメリットが生まれます。私たちはAIを、一度導入して終わりではなく、継続的に「育てていく」という新しい視点を持つ必要があるのです。


8.まとめ: AIは医師の未来を拓く、最強のパートナー

本記事では、日本の医療現場における画像診断AI支援の現状を、6つのステップで解説してきました。重要なポイントを改めて整理しましょう。

  • AIはPMDAに承認された「プログラム医療機器」として実用化が進んでいる。
  • 2024年度の診療報酬改定でAI加算が新設されるなど、国の後押しが本格化している。
  • AIは医師の「第3の目」として、見逃し防止や読影効率化に大きく貢献する。
  • 安全な運用には、学会指針に沿った責任体制の構築が不可欠である。
  • 情報連携の標準化セキュリティ対策が、円滑な運用の鍵を握る。
  • IDATEN制度により、AIは導入後も継続的に性能を向上させることができる。

医用画像AIは、決して医師の仕事を奪う存在ではありません。むしろ、医師を日々の膨大な業務から解放し、より創造的で、患者さん一人ひとりと向き合うための時間を生み出してくれる「最強のパートナー」です。この新しいパートナーと共に、日本の医療がより質の高い、持続可能なものへと進化していく未来は、もうすぐそこまで来ています。この記事が、先生方の病院でAI活用の第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

免責事項

本記事は、2025年9月時点で入手可能な情報に基づき、医療関係者への一般的な情報提供を目的として作成されたものです。内容の正確性には万全を期しておりますが、その完全性や最新性を恒久的に保証するものではありません。また、本記事は特定の治療方針や医療機関の経営判断を推奨するものではなく、医学的・法律的な助言に代わるものではありません。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害や不利益についても、当方は一切の責任を負いませんので、あらかじめご了承ください。最終的な判断は、必ずご自身の責任において行ってください。

本記事は生成AIを活用して作成しています。内容については十分に精査しておりますが、誤りが含まれる可能性があります。お気づきの点がございましたら、コメントにてご指摘いただけますと幸いです。

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